糖転移ヘスペリジン研究報告 詳細
研究会での発表
柑橘由来ポリフェノール“糖転移ヘスペリジン”の脂質代謝改善作用とそのメカニズム
三皷仁志:㈱林原生物化学研究所/設立記念セミナーにて(2008.9.12)
これまで我々は、柑橘由来フラボノイドのヘスペリジンを酵素によって高水溶性化した糖転移ヘスペリジンを開発し、本物質が多彩な生理活性を保持するかどうかについて研究を重ねてきた。その一端として血清トリグリセライド(TG)低下作用に注目し、糖転移ヘスペリジンが高TG血症被験者の血清TGを選択的に低下させることを見出した(図1、2)。本作用は、VLDL代謝異常の是正に起因し(図2~6)、small dense LDLの生成抑制に寄与することが示唆された(図3、4、6)。また、本作用は、肝臓からの過剰なVLDL分泌が低下したことによると考えられた(図2、5、6)。そこで、この作用機序を明らかにするため、高脂肪食負荷ラットに糖転移ヘスペリジンを経口投与し、種々の脂質代謝パラメーターに与える影響を解析した。その結果、血清TGおよびコレステロール(VLDL + LDL)は高脂肪食負荷によって上昇し、これらの上昇は糖転移ヘスペリジン投与で有意に抑制された。肝臓脂質については、TGとコレステロールエステル(CE)が投与によって有意に減少した。肝臓の脂質代謝関連遺伝子の発現解析では、投与によってfatty acid synthaseのmRNA発現量が有意に低値を示し、かつ、carnitine palmitoyltransferase I、IIのmRNA発現量が有意に高値を示した(図7)。以上より、糖転移ヘスペリジンは、肝臓のTGとCEを低減させて過剰なVLDLの合成・分泌を抑制し、血清TGの低下に寄与することが示唆された(図8)。また、本作用には、脂肪酸合成系の抑制と脂肪酸β-酸化系の亢進が関与すると推測された(図8)。