糖転移ヘスペリジン研究報告 詳細
研究会での発表
糖転移ヘスペリジンのビタミンC消耗抑制作用とその生理的意義
松本洋介:㈱林原生物化学研究所 開発センター/第1回研究発表会にて(2009.11.30)
ビタミンCは、神経系、免疫系および内分泌系において重要な役割を果たしており、生体機能の恒常性維持に関与している(図1)。しかしながら、ビタミンCは不安定な物質であるため、種々のストレスにより生体内で分解を受ける。そのため、現代社会では、ストレスや生活習慣の変化により、生体内ビタミンC量の減少とともに生体機能恒常性の破綻が懸念される(図2)。一方、ヘスペリジンは種々の疾患に対し予防・改善効果を発揮することが知られており、最近では、抗ストレス作用も報告されている(図3)。このような生体機能調節に関与するビタミンCおよびヘスペリジンは柑橘類に多く含まれており、これらの相互作用が期待され、古くから様々な疾患に対し利用されてきた。また、柑橘類由来フラボノイドであるシトリン (ヘスペリジンを主成分とするフラボノイドの混合物) がビタミンCの抗壊血病活性を高めることも報告されている(図4)。しかしながら、これらのメカニズムについては完全には解明されていない。そこで、生体機能恒常性におけるビタミンCおよびヘスペリジンの相互作用に注目し、本研究では、主にビタミンCの生体内レベルに及ぼす糖転移ヘスペリジン(GHes)の影響について検討を行なった(図5)。その結果、ODSラットにおいてビタミンC摂取制限による血清および肝臓中ビタミンC量の減少はGHes摂取により改善された。その効果は、特にGHes 1.0 g/kg混餌投与群で顕著であり、血清および肝臓中ビタミンC量が通常レベルにまで回復した(図6)。また、大脳、胸腺、副腎においても同様に、GHes摂取によりビタミンC減少の改善傾向が認められた(図7、8)。以上の結果から、GHesは、ビタミンCの消耗を抑制することによって、生体機能の恒常性維持に寄与すると考えられる(図9)。