生体の恒常性におけるビタミンCと糖転移ヘスペリジンの相互作用
(株)林原生物化学研究所 開発センター 松本洋介
ビタミンCは神経系、免疫系及び内分泌系において重要な役割を果たしており、生体の恒常性維持に関与している(図1)。しかしながら、ビタミンCは不安定な物質であるため、種々のストレスにより消耗される。そのため、現代社会では、ストレスや生活習慣の変化により、生体内ビタミンC量の減少とともに生体恒常性の破綻が懸念される(図2)。ヘスペリジンは種々の疾患に対し予防・改善効果を発揮することが知られており、最近では、抗ストレス作用も報告されている。このような生体調節機能に関与するビタミンCとヘスペリジンは、共に柑橘類に多く含まれており、これらの相互作用が期待され、古くからさまざまな疾患に対し利用されてきたが、そのメカニズムについては完全には解明されていない。そこで、本研究では、生体の恒常性におけるビタミンCとヘスペリジンの相互作用に注目し、ビタミンC合成能欠如ラット(ODSラット)を用いてビタミンC消耗に及ぼす糖転移ヘスペリジンの影響について検討した(図3)。その結果、ODSラットをビタミンC制限食で飼育したところ、顕著なビタミンC欠乏症状が観察されたが、糖転移ヘスペリジンの投与により症状は緩和され、特に、血清、大脳及び肝臓中ビタミンC量の回復が認められた(図4、5)。糖転移ヘスペリジンはビタミンCの消耗抑制を介して生体の恒常性を維持することが示唆され(図6)、様々な分野での活用が期待される(図7)。
図1)神経・免疫・内分泌系におけるビタミンCの役割 |
図2)神経・免疫・内分泌系におけるビタミンCの役割 |
図3)実験方法 |
図4)血清中VC量変化に及ぼすG-ヘスペリジンの影響 |
図5)組織中VC量変化に及ぼすG-ヘスペリジンの影響 |
図6)まとめ |
図7)今後の展望(糖転移ヘスペリジンの応用) |